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第4回原子力委員会と原子力規制委員会との意見交換会(令和7年10月16日)

出典 : https://youtube.com/live/5zy5RIEjrqA?si=rKIazngEpHqBfzW2

原子力規制委員会の取り組み報告(山中委員長)

直近3年間の主な活動について、以下の通り報告がありました。

  • 新体制と審査状況

    • 新たに長崎委員、山岡委員、神田委員が就任。
    • 原子力発電所の再稼働審査は、許可済みが18基、審査中が8基。特に困難であった自然ハザードに関する審査は一つの山場を越えた。
  • 研究開発段階炉への対応

    • 高速実験炉「常陽」は、設置変更許可の第2回審査を実施中。
    • 高温工学試験研究炉(HTTR)は、水素製造など熱利用に関する新たな設備との接続審査を進行中。
  • 福島第一原子力発電所への対応

    • 今後10年を見通した長期のリスク低減マップを新たに作成し、監視・指導を強化。
    • ALPS処理水の海洋放出は、大きなトラブルなく継続。
    • デブリの試験的な取り出しを開始し、本格的な取り出しに向けた議論を進めている。
  • 新たな規制制度とプロセスの改善

    • 高経年化した発電所に対応するため、「長期施設管理計画認可制度」を2025年6月から施行。
    • リスク情報を活用した規制の改善として、伊方発電所にてオンラインメンテナンスの試験的導入を開始。
    • AIの活用を含め、審査プロセスの継続的な改善に取り組む。
  • 将来の原子力利用への対応

    • 事業者から提案されている革新軽水炉の導入に向け、約1年間意見交換を実施。
    • 核融合炉開発の活発化を受け、規制のあり方について事業者等との意見交換を進めている。
    • 小型モジュール炉(SMR)については、国際会議等を通じて情報収集・意見交換を行っている。
  • 人材育成

    • 大学・高等専門学校における原子力規制人材育成プログラムに対し、補助金を交付。規制庁職員を講師として派遣する双方向の支援を実施。
    • 規制庁職員の能力向上のため、資格認定制度や人材育成センターでのシミュレータ訓練などを実施。

原子力委員会の取り組み報告と規制委員会へのコメント(上坂委員長)

原子力委員会の近年の取り組みを報告するとともに、原子力規制委員会に対して以下の6点のコメントと要請がありました。

  • 原子力委員会の主な取り組み

    • 新たに直井委員、吉橋委員が就任。
    • 長期的な視点から「原子力利用に関する基本的考え方」を取りまとめ、戦略的な方向性を示した。
    • 「医療用ラジオアイソトープ製造利用推進アクションプラン」の進捗を毎年フォローアップ。
    • IAEA(国際原子力機関)との「リーゼ・マイトナー・プログラム」や、OECD/NEA(経済協力開発機構/原子力機関)の女子高生向けセミナーを共催し、人材育成(特に女性研究者・技術者)に貢献。
  • 規制委員会へのコメント・要請事項

    1. 審査の迅速化と新型炉への対応: 電力需要の拡大を背景に、審査中の発電所の早期再稼働は社会的要請であるとし、審査の適切なスピードアップと革新軽水炉等の新型炉に対する継続的な規制対応を要請。
    2. 最新技術・知見による規制のアップデート: 確率論的リスク評価(PRA)の適用範囲拡大、オンラインメンテナンスの本格導入、審査におけるAI活用など、最新の技術動向を踏まえた規制の高度化を要請。
    3. 再処理施設等の竣工に向けた体制強化: 日本原燃の再処理施設およびMOX(混合酸化物)燃料加工施設の竣工・操業を見据え、プルトニウム管理をはじめとする核不拡散・核セキュリティへの対応体制強化を要請。
    4. 医療用ラジオアイソトープ(RI)への対応: RI治療の普及が期待される中、廃棄物に関するルール整備などについて、厚生労働省等と連携して検討を継続することを要請。
    5. 少量核燃料物質の管理問題への関与: 大学や研究機関が保管する液体状の核燃料物質等の処分問題が進展していない現状を踏まえ、規制委員会も当事者から状況を聴取し、解決に向けた取り組みに関与することを要請。
    6. 人材育成に関する取り組みへの質問: 規制庁における人材不足が報道されている状況について、近年の人材育成の取り組みや今後の方針について質問。

意見交換1:研究施設等廃棄物のバックエンド問題

  • 議論の概要

    • 規制委員会の認識(主に長崎委員):

      • 中深度処分などに関する規制基準の整備は進めてきたが、多くの事業者が廃止措置で発生した廃棄物を自サイトで保管し続けている。これはリスク管理上好ましくない。
      • 廃棄物処分の実施主体であるJAEA(日本原子力研究開発機構)の当事者意識に懸念があり、社会全体のリスク低減のため、原子力委員会から文部科学省等と連携して指導・環境整備を働きかけてほしい。
      • JAEAや産業界全体で、廃棄物処分に不可欠な「水化学」分野の人材が弱体化している危機感がある。
    • 原子力委員会の認識(主に上坂委員長、吉橋委員):

      • 大学では廃棄物の保管容量が限界に達し、研究・教育・人材育成に支障が出始めている。
      • 未利用核燃料の管理についても、大学では人材・予算ともに不足しており、引き取りの仕組みも機能していない。
      • 基本的な処分方針は決まっているものの、個別の具体的な手順の段階で停滞している。
      • この問題の解決は、将来の商業炉の廃炉廃棄物処分にも繋がるため、喫緊の課題である。
  • 規制委員会からのコメント・要請事項

    • 山中委員長: 原子力の未来を語る上で、過去の負の遺産の処理は不可欠。規制側としても対応するが、原子力委員会として、関係機関を巻き込んだ前向きなアクションを開始してほしい。

意見交換2:再処理施設の稼働に伴う諸課題

  • 議論の概要

    • 原子力委員会の認識(主に直井委員、上坂委員長):

      • 六ヶ所再処理施設の稼働に伴い、プルトニウム保有量が一時的に増加する可能性があるため、将来的な減少見通しを示すなど、利用の透明性を確保することが重要。
      • 大規模な再処理施設における保障措置(SG: Safeguards)は技術的ハードルが高く、過去の経験を持つ技術者が減少しているため、後継者の育成が急務。
      • 「セキュリティ・バイ・デザイン」等の概念が事業者に十分に浸透しておらず、設計段階からの考慮を促す啓蒙活動が必要。
    • 規制委員会の認識(主に長崎委員、杉山委員):

      • 核物質防護(PP: Physical Protection)と保障措置(SG)は、原子力の平和利用を担保する上で同レベルで重要。しかし、事業者内ではSGへの意識がPPに比べて低い傾向が見られる。
      • 一般社会の関心もセーフティ(安全)に偏りがちであり、セキュリティや保障措置の重要性について、原子力委員会による啓蒙活動に期待する。
      • 現状の規制制度においても、セキュリティや保障措置に関するプロセスが後回しにされがちであり、より重要視した制度への改革も必要かもしれない。
  • 規制委員会からのコメント・要請事項

    • 長崎委員、杉山委員: 事業者や社会一般に対する核セキュリティ・保障措置文化の醸成について、原子力委員会からも指導・啓蒙活動を推進してほしい。

意見交換3:今後の原子力利用の見通しと人材育成

  • 議論の概要

    • 原子力委員会の認識(主に吉橋委員、上坂委員長):

      • 若手教員や大型研究施設の減少など、人材育成の基盤が弱体化している。産学官が連携した司令塔機能の創出が必要。
      • 若者の関心は、安全への取り組みに加え、今後は新型炉開発など「新しい技術への挑戦」にも向かうと予想される。原子力の魅力を積極的に発信していく。
      • 大学で裾野を広げると同時に、実務に入ってからの専門資格取得支援やシニア技術者からの技能伝承といった社会人教育との二本立てが重要。
    • 規制委員会の認識(主に山岡委員、杉山委員、児嶋次長、長崎委員):

      • 裾野の拡大: 規制の観点では、地球科学など自然ハザードの専門家も不可欠。原子力に閉じるのではなく、多様な専門分野の学生に原子力分野がキャリアパスとなり得ることを示していくべき。
      • 魅力の発信: 「業界が人手不足で困っている」というネガティブなメッセージではなく、若者が「すごい」「かっこいい」と思えるような原子力の将来性や魅力を語ることが最も重要。規制側は未来を語りにくいため、この役割は原子力委員会に強く期待する。
      • 現実的な課題への対処: カナダの事例を参考に、給与水準や職場環境(特に女性の働きやすさ)、勤務地など、若者が魅力を感じる環境整備も不可欠。電力会社での離職者の増加といった現実にも目を向ける必要がある。
      • 負の側面への言及: 若者は再処理の遅れや高レベル放射性廃棄物の問題も直視している。魅力だけでなく、これらの課題に対する将来像と現状とのギャップを埋めるメッセージも発信してほしい。
  • 規制委員会からのコメント・要請事項

    • 杉山委員、児嶋次長: 原子力の未来や魅力について、規制委員会に代わって原子力委員会が力強く発信してほしい。
    • 長崎委員: 産業界が抱える人材流出や技術伝承といった現実的な課題の解決に向けて、原子力委員会が関係機関と議論を進めることを期待する。
    • 児嶋次長: 米国DOE(エネルギー省)の大規模な人材育成投資のように、日本も省庁横断で強力な人材育成策を構築する必要がある。原子力委員会にもその議論への協力を期待する。

総括

両委員会の委員長から、立場は違えど、今回議論されたバックエンド問題や人材育成は共通の重要課題であるとの認識が示されました。今後も双子の委員会として、精力的に意見交換を継続していくことを確認し、会合は終了しました。