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第561回核燃料施設等の新規制基準適合性に係る審査会合(令和7年10月27日)

出典 : https://youtube.com/live/V3t2gvn6SHo?si=bsgNK8RydStRF3Tm

議題1:日本原子力発電(株)東海低レベル放射性廃棄物埋設事業所 第二種廃棄物埋設事業許可申請について

本議題では、収着分配係数(Kd)の設定に関して、資料1-1(実験による取得)および資料1-2(文献による設定)に基づき議論が行われた。


1. 技術的な議論の内容

資料1-1:収着分配係数取得試験の条件設定 - 背景: 過去の審査会合(4月28日)にて、コバルト(Co)、ユーロピウム(Eu)、アメリシウム(Am)のブランク試験において沈殿が確認され、Kd値の信頼性に指摘があった。 - 事業者の対応状況: - ICP-MS (Agilent 8900) を用いたコールド試験の成立性を確認するため、イオン確認試験を実施したが、Co、Euともに定量可能な濃度を確認できなかった。 - 熱力学計算コードPHREEQCを用い、沈殿が発生しない実験条件(溶解度)の検討を行った。 - PHREEQC計算結果(コバルト): - 純水条件(ケース1)では、溶解度は検出限界 (2x10^-11 mol/L) を上回る (4x10^-9 mol/L) が、検討対象の弱アルカリ(ケース2)および強アルカリ(ケース3)条件では、溶解度が検出限界を下回り (2x10^-12, 2x10^-14 mol/L)、検出限界未満で沈殿すると評価された。 - この結果から、CoについてはAgilent 8900を用いた試験実施は困難と判断し、文献に基づくKd設定を検討する方針が示された。 - PHREEQC計算結果(ユーロピウム): - 純水条件(ケース1)では沈殿なしと評価された。 - 弱アルカリ条件(ケース2)では、溶解度 (2x10^-10 mol/L) が検出限界 (7x10^-11 mol/L) を上回るものの、固相による吸着を考慮した添加濃度 (1x10^-9 mol/L) に比べると溶解度が低いため、沈殿の可能性が示唆された。 - ただし、溶解度と添加濃度の差が僅かであるため、実験的にKdを取得できる可能性があると評価された。 - この結果から、Euについてはケース2(弱アルカリ)、ケース4(現地地下水)、ケース5(人工海水)での試験実施が方針として示された。

資料1-2:文献を用いた収着分配係数の設定状況 - 国内外の設定例調査: - 国内: NUMO(原子力発電環境整備機構)や日本原燃の例が示された。JAEA(日本原子力研究開発機構)の収着データベース(JAEA-SDB)を活用し、平均値や原燃取得データと比較して保守的な値を設定する例が紹介された。 - 海外: 仏DRAC、スウェーデンSFR、フィンランドONKALO、スイスNAGRA等の例が示され、文献値、専門家レビュー、データベース(NEA、NAGRA独自DBなど)を用いて設定していることが確認された。 - JAEA-SDBを用いたデータ抽出方針: - 固相: 事業者施設の固相(砂質土)に該当する「サンドストーン」および「ソイル」グループからデータを抽出する。 - 液相: SDBでは液相のグループ分けが整備されておらず、「水酸化カルシウム水溶液」の登録が1件しかないため、液相の種類では絞り込まない。 - 代替アプローチ: 液相のpHとイオン強度で条件を絞り込む。 - 現地地下水: pH 6-8、イオン強度 0.1 mol/L以下 - 水酸化カルシウム水溶液: (弱) pH 8以上, (強) pH 11以上、イオン強度 0.1 mol/L以下 - 人工海水: イオン強度 0.1-1 mol/L

  • 今後の予定:
    • 上記条件でデータを抽出し、幾何平均の1/10の値を算出する。
    • 最も可能性が高いシナリオ/最も厳しいシナリオのKdを設定し、国際的な文献値と比較して保守性を確認する。

2. 規制庁からの宿題事項(コメント・指示)

前回の会合(第549回)で「まず実験での取得を優先し、技術的に困難な場合は文献値の採用を検討する」という方針が確認されていることを前提に、以下の指示・コメントがあった。

資料1-1(実験)関連

  • [全般] Co・Euの実験方針の再検討:
    • 事業者はCoについて文献値へ移行する方針を示したが、PHREEQC計算の妥当性(特に溶解度制限固相の選定)に疑義がある。
    • 実験が原理的に不可能であると結論付ける前に、計算の妥当性検証と、沈殿(共沈)を回避する実験条件の検討を両核種(Co, Eu)で実施すること。
  • [Co・Eu] (1) 溶解度の実験的検証 (純水系):
    • PHREEQC計算の妥当性、特に溶解度制限固相(Coの四酸化三コバルト(Co3O4) 、Euの結晶質/アモルファス)の妥当性を確認するため、溶解度試験を実施すること。
    • 試験条件(案): 純水系(炭酸・カルシウムを排除し、pH調整に水酸化ナトリウム等を使用)で、コバルト(またはユーロピウム)を過飽和状態にし、pHを段階的に(例:pH 6, 8, 9, 12など)変化させ、静置後の上澄み液の濃度を測定し、実際の溶解度を確認すること。
    • 試験は過飽和側からのアプローチ(沈殿法)を基本とするが、実験計画(サンプリング方法、静置期間等)は専門家の知見も踏まえ慎重に検討すること。
  • [Co・Eu] (2) 共沈を回避した分配係数取得試験 (ケース2'):

    • 従来の試験で問題となった炭酸カルシウム(カルサイト)との共沈を回避するため、以下の手順(ケース2')で試験を実施すること。
    • 手順(案):
      1. グローブボックス外で、飽和水酸化カルシウム水溶液に空気バブリングを行い、炭酸と平衡させてカルサイトを意図的に沈殿させる。
      2. 沈殿が平衡に達した後の上澄み液を採取する(ろ過等)。
      3. この上澄み液をグローブボックス(または空気遮断環境)に持ち込み、Co(またはEu)と固相を添加して分配係数を取得する。
    • グローブボックスの使用要否(密閉容器等での代替可能性)については、空気遮断の確実性を踏まえ検討すること。
  • [Co・Eu] (3) 高アルカリ条件での代替試験 (ケース3'):

    • 高アルカリ条件(ケース3)での共沈を回避するため、水酸化カルシウムの代わりに水酸化ナトリウム(NaOH)を用いてpH 12等の高pH条件を調整し、分配係数を取得する試験(ケース3')を検討すること。
    • (規制庁見解)Coの溶存化学種は高pHではアニオン(Co(OH)3-等)であり、Na+(1価)とCa2+(2価)の違いによる競合の影響は小さく、高pHでのKdを取得する上で妥当な手法と考えられる。
  • [Co・Eu] (4) 試験の品質保証:
    • 今後実施する分配係数取得試験においては、前回指摘された沈殿の発生や容器への収着がないことを確認するため、ブランク試験等を適切に実施し、データの品質を確保すること。
  • [資料全般] ろ過条件の記載:
    • 資料1-1の7ページなどで「0.45マイクロメートルフィルター」の使用が記載されているが、この数値だけが独り歩きすると、コロイドの影響評価が不要であると誤解される懸念がある。
    • まとめ資料等において、過去に「限外ろ過」と「0.45マイクロメートルろ過」の比較を行い、コロイドの影響が無視できることを確認した経緯を明記した上で、便宜的に0.45マイクロメートルを使用している旨を記載すること。

資料1-2(文献)関連 - [全般] 文献調査の継続: - 実験データの取得(資料1-1)が優先されるが、文献調査(資料1-2)も並行して進めること。 - 文献値は、(a) 実験が困難だった場合の代替データ、(b) 実験で得られたデータの妥当性を確認するクロスチェック用データ、として活用できる。 - [Co・Eu] (1) 文献の詳細調査 (実験条件の確認): - JAEA-SDB等のデータベースから抽出したKd値だけでなく、元の文献(原典)にあたり、具体的な実験条件(HOT/COLDの別、濃度、pH、沈殿の有無の確認方法など)を詳細に調査すること。 - 特に、Coの高pH条件でデータを取得した文献(例:原研JPDRのレポート)があれば、その実験手法が今回の実験計画の参考になる可能性があるため、精査すること。 - [統計処理] (2) 統計処理の妥当性検証: - 文献値を用いる場合のアプローチ(幾何平均の1/10を採用)は理解するが、その値が保守的であることを示す必要がある。 - 実際に抽出したデータの分布(箱ひげ図など)を示し、採用した値(幾何平均の1/10)が、標本の最小値やばらつきと比較して、保守的な設定となっているかを具体的に説明できるように整理すること。