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第2回国内保障措置制度のあり方検討会(令和7年11月11日)

出典 : https://youtube.com/live/BVr9Z5eIP8I?si=HbMaJjdWx56En0UC

議題1:前回の振り返りと、それを踏まえた問題提起

原子力規制庁(中崎氏)より、資料1に基づき、現状整理、前回の議論の振り返り、及び問題提起が説明されました。

1. IAEAと我が国の役割の在り方 * 現状と課題: 日IAEA保障措置協定では、国の計量管理制度(SSAC)のファインディングス活用や不必要な重複の回避がうたわれています。しかし近年、IAEAはリソース制約に直面しており、SSACの実効性をより重視する傾向にあります。 * 問題提起: * 六ヶ所再処理施設、MOX燃料加工施設の竣工を控え、IAEAのリソース状況に関わらず、日本は原子力の平和利用を担保し、国際社会への説明責任を果たし続ける必要があります。 * IAEAと協力し、不必要な重複の解消やファインディングスの活用(国内査察の知見提供など)に具体的に取り組むことが重要です。 * 国内の体制・制度がIAEA保障措置要件を確実に満足するものとなるよう、見直しを進める必要があります。

2. JSGO(原子力規制庁保障措置室)とNMCC(核物質管理センター)の役割のあり方 * 現状と課題: 1977年炉規法改正でNMCCが「指定情報処理機関」に、1999年追加議定書対応の法改正で「指定保障措置検査等実施機関」に指定されました。JSGOはDIV・CA(設計情報検認・補完的アクセス)やIAEA交渉、NMCCは情報解析・保障措置検査を主に担っています。 * 問題提起: * NMCCの高度専門人材が集積しやすい利点を活かし、TSO(技術支援機関)機能や規制庁職員の出向受入等の人材育成機能の役割拡充を検討してはどうか。 * 今後増大するJSGOのリソースに対応するため、JSGOが行うDIV・CA等の立入検査権限の一部をNMCCも実施できるよう検討してはどうか。 * NMCCが受ける2つの指定(情報処理・検査実施)は実務上密接なため、業務効率化や予算の効率的活用の観点から、両業務の一体化(例:交付金への一本化)を検討してはどうか。

3. 事業者の役割の在り方 * 現状と課題: 近年、IAEAではSLA(国レベルアプローチ)の適用や「セーフガード・バイ・デザイン」の概念が重視され、設計段階からの事業者の関与が求められています。1999年以降の法改正がなく、こうした考え方が国内制度に反映されていない可能性があります。 * 問題提起: * 事業者は保障措置の重要性への認識を向上させ、3S(Safety, Security, Safeguards)連携を含む取組の自発的・継続的改善を図ることが重要です。これを施設の重要度に応じて規制要求事項に位置づけ、規制委員会が改善を求める措置を検討してはどうか。 * 国の査察機器(カメラ等)の整備は政府が責任を持つ一方、査察・分析を適切に行うための施設側環境(分析室、作業スペース等)の整備・維持管理は、事業者が施設と一体的に責任を持つことが合理的ではないか。これら事業者の責務を法的に明確化する必要がある。


議題2:保障措置経験者からの意見聴取

1. 堀 雅人 氏(日本原子力研究開発機構:JAEA)

大型核燃料サイクル施設の保障措置の経験と課題について説明。

  • PFPF(プルトニウム燃料製造施設)のホールドアップ問題(1994年):
    • 約70kgのプルトニウム大量付着に対し、IAEA協議、設備改良、高精度NDA(非破壊分析装置)開発等で9.5kgまで低減。
    • 対策として、操業から独立した「保障措置室」の設置や、「安全と核不拡散は車の両輪」とする意識改革(保障措置強化月間)を実施しました。
  • TRP(東海再処理工場)の保障措置改良とSRD問題:
    • 1995年、IAEAからの11項目の改善提案を受け、DIQ(設計情報質問書)改定、NRTA(準リアルタイム計量管理)導入、SRD(発送者・受領者間差異)解析等を実施。
    • 2003年に報道されたSRD(累積206kg)問題は、要因調査(ハル付着、Pu241減衰未補正、高レベル廃液分析スラッジ)を行い計量報告を修正し、IAEAも妥当と結論しました。
    • 教訓として、SRDやMUF(在庫差)の評価には全社的・横断的な検討と高度な専門知見が必要であり、「核物質管理・保障措置委員会」設置やレベルアップ研修で対応しました。
  • 核燃料サイクル施設の教訓:
    • 想定すべき事象として、①施設パフォーマンス未達(ホールドアップ等)、②計量管理・査察機器の性能未達、③IAEAのリクワイアメント変更、が挙げられます。
    • 組織内での重要性再認識、専門人材の継続的確保、技術的能力の蓄積が重要です。
  • SLA(国レベルアプローチ)と日本の役割:
    • IAEAはリソースが逼迫しており、日本の保障措置業務量は突出しています。日本の効率化がIAEA全体の効率化につながります。
    • SLAの6ファクターのうち「SSAC(国の計量管理制度)の技術的能力」が未活用です。
    • IAEAの独立性を維持しつつ、日本の高い検査能力を活かした査察の分業(ワンジョブ・ワンパーソン)や、国内査察の知見(ファインディングス)のIAEAへの提供による効率化(査察回数減)を、IAEAへ働きかけるべきです。

2. 岩本 友則 氏(日本核物質管理学会)

特に六ヶ所施設を中心とした国内保障措置制度のあり方について説明。

  • 六ヶ所大型施設の保障措置コンセプト:
    • 核物質管理センター主催の検討委員会等で構築されたコンセプトは「リモート査察」です。(技術的ツールがなかった東海の24時間査察とは異なる)
    • 中間在庫確認、棚卸に加え、OSPOS(運転状況確認点)査察(2時間前通告)も実施します。
  • 六ヶ所のリモート査察ツール:
    • 核物質がセル内にありアクセス不可なため、プロセス全体に監視システム(溶液監視、リアルタイム・ホールドアップ測定、廃棄物測定)を導入。
    • 自動サンプリングシステムにより、査察側の要求でOSL(オンサイト分析所)が遠隔でサンプルを採取・回収可能です。
    • MOX施設でも、核物質の位置・量をリアルタイムで把握するシステムを導入。
    • I3S(統合査察情報システム):IAEA開発。査察機器データと申告データを統合し、国とIAEAが独立評価。データはIAEA本部にも送られ、現地に来なくても評価が可能です。
  • 日米原子力協定:
    • 日本の保障措置は日米協定と不可分。特に福島第一原発のデブリ取り出しは、物理的に「形状及び内容の変更」(協定付属書1)に該当する可能性があり、米国と事前協議すべきです。
  • 今後の課題(施設ステータス変更):
    • 廃炉やデコミッショニングが進む中、施設のステータス変更(DIQ変更)をうまく活用し、保障措置の合理化・効率化を図るべきです。
  • IAEAへの対応:
    • IS(統合保障措置)移行後も不要なメジャー(措置)が残っていないか、IAEAと見直すべきです。
    • IAEAからの指摘に対し、疑問やコメントがあればしっかり反論・コメントすることが、世界の保障措置の発展にもつながります。
  • 結論: 国、核管センター、事業者の3者が協力して次世代の体制を構築すべきです。

3. 菊地 昌廣 氏(きくりん国際政策技術研究所)

4つの検討事項(人材、制度強化、分析、事業者対応)についてコメント。

  • 保障措置の構造(政策科学):
    • 保障措置は核不拡散という国際合意を技術的に検証するものです。
    • 事業者は「正確な情報の報告」と「検証環境の提供」、国は「報告の精査」と「疑義・不適合発生時の政策判断(権利義務の範囲含む)」という役割を担います。
  • 1. 人材確保・育成:
    • 各段階(事業者、国)で求められる能力(事業者:技術レベル、国:査察・分析技術、政策判断機能)を向上させ、各段階が連携し知見の連続性が担保できる環境が必要です。大学等も巻き込んだ人材供給体制を構築すべきです。
  • 2. 制度的な強化(大型施設本格創業を踏まえ):
    • 六ヶ所施設群の稼働による取扱量増加に伴い、厳格な保障措置目標の達成(迅速な情報提供、高頻度の査察)が求められます。
    • 現行の「②国内査察・分析(主にNMCC)」と「③疑義解明・政策判断(主にJSGO)」の業務を一体化し、フットワークの良い実施体制の強化が必要です。
  • 3. 保障措置資料分析のあり方:
    • 分析業務は国の検査業務の一環(NMCCが運用)であり、長期停止は許容されません。
    • 東海・六ヶ所の分析所は運用から期間が経過しており、経年劣化を想定した綿密な長期維持管理計画の策定と経費確保が必要です。
  • 4. 事業者の対応のあり方(品質向上、コスト負担等):
    • 保障措置は官民一体で対応すべきであり、事業者は制度の精神や国際約束上の権利・義務を深く理解すべきです。
    • 技術面では、報告に至る全システムの品質を保証する管理体制(例:QMS導入)が必要です。
    • トラブル発生時、迅速に国と協力し是正措置をとれる体制を構築すべきです。
    • コスト負担は、原子力の平和利用の精神に鑑み、IAEA及び国当局と協議し、応分の負担を行うべきです。

討議:JSGOとNMCCの役割のあり方(検討事項①②)

論点1:NMCCの2つの指定(情報処理・検査実施)の一体化 * IAEAが近年、活動内容の「精緻な分析」のレベルを高めている(例:大学への補完的アクセスでの詳細聴取)のに対し、NMCC内では2つの指定(情報処理・検査実施)により、法的に情報共有がシステム化されていないとの指摘がありました(宇根崎氏)。 * 規制庁は、両業務は法律・予算(委託費・交付金)が区分されているとしつつ、業務・予算の効率化の面から統合メリットを認識していると回答しました(中崎氏)。 * NMCCからは、分析データ(検査業務)を情報処理業務で解析するなど実態は密接不可分であり、交付金として一体化されれば円滑な業務推進が図りやすいとの意見が出されました(坪井氏)。 * 業務の一元化・統合は、効率化のために本検討会でしっかり検討すべきとの意見がありました(村上氏)。

論点2:NMCCの権限拡大(補完的アクセス等への対応) * NMCCから、現行法上、NMCC検査員はIAEA査察(協定)への「立会い」は可能だが、追加議定書の「補完的アクセス」への立会いは認められていない、との課題が示されました。 * 一方で、NMCC検査員が規制庁の「技術参与」(非常勤国家公務員)として補完的アクセスに対応した実績もあり能力は有しているため、資料1の論点(追加議定書対応も指定機関が実施)を前向きに検討してほしい、との要望がありました(坪井氏)。 * 関連し、核不拡散のようなセンシティブ情報に対し、民間の業務(NMCC)を想定した場合のセキュリティ・クリアランス制度の必要性について問題提起がなされました(秋山氏)。

論点3:国の保障措置の目的とIAEAの動向 * IAEAは核物質検認だけでなく、原子力活動全体やIAEAへの対応姿勢も評価している一方、日本の「国内査察官」が何を見ているのか(IAEA同様に転用検知までやるのか)は整理が必要との指摘がありました(堀圭氏)。 * IAEAの保障措置は、①対象の拡大(施設→未申告活動→国全体(SLA))、②不具合事象への厳格化、という変化があり、日本のSSAC(国の計量管理制度)の信頼性・客観性がより重要になっているとの指摘がありました(村上氏)。 * IAEAは独立検証が基本であり、SSACの「検証結果」そのものではなく、SSACが提供する「情報(データ)の品質(完全性・正確性)」を「技術的能力」として評価しているとの見解が示されました(菊地氏)。 * SLA導入後も査察業務量(CDFV)が増加傾向(2024年が過去最高)にある実態が指摘されました(坪井氏)。 * これはイラン・ウクライナ情勢の影響が大きい一方、日本の濃縮・再処理施設はIS(統合保障措置)でも査察を減らせないため、SSACによる査察代行のような別のアプローチがない限り、六ヶ所・J-MOXが稼働すれば日本の査察量は減らないとの見通しが示されました(村上氏)。 * IAEAは財政的・人材的に厳しく、独立検証の原則は崩さずとも、信頼できるSSAC(特に拡大結論の長期受領国)を「活用(信用)」しようという方向に変わっているとの解説がありました(村上氏)。 * SLA下で日本の信頼を得るには、保障措置を技術論でなく、広い「不拡散政策」の文脈に位置づけることが重要との指摘がありました(秋山氏)。

論点4:人材確保・育成と人事交流 * 大型施設稼働に伴う短期的な人員確保と、技術革新による中長期的な業務負担低減が課題として提示されました(秋山氏)。 * 3S(安全・セキュリティ・保障措置)の壁を越えた人事交流(核管センター、規制庁、JAEA、事業者間)が、人材育成と短期的な人員確保に有効ではないかとの提案がありました(小森氏、堀圭氏)。 * 事業者(日本原燃)からも、計量管理は国・事業者が現場を共有して対応すべきであり、官民挙げた教育システムの構築が必要(人材の取り合い懸念)との意見が出されました(中村氏)。

論点5:六ヶ所施設に関するIAEAの知見と準備 * IAEA査察官が平和利用の再処理技術をどれだけ理解しているか疑念があり、本格稼働前にIAEA・国・事業者で保障措置アプローチ(ブルーブック)を再レビューし、共通言語を持つべきとの提案がありました(菊地氏、村上氏)。 * これに対し、六ヶ所ではIAEA新任査察官向け教育(プロセス、3Dデータ、モックアップ使用)を過去7回実施済みであり、また試運転(425トン処理)でシステムの信頼性は確認済みであり自信がある、との反論がありました(岩本氏)。 * IAEAは軽水炉のリモート監視を(コスト増で)止めた経緯があるが、六ヶ所のリモートは軽水炉(カメラ監視)とは異なり、核物質の「データ」そのものを送るものであり、効率化は可能との見解が示されました(岩本氏、村上氏)。


討議:事業者の保障措置対応のあり方(検討事項③④)

論点1:事業者の自主的改善(QMS、キャップ活動) * 保障措置(SG)の品質向上(QMS導入)に関し、核セキュリティ分野で先行した「キャップ活動(是正処置プログラム)」のアナロジーが有効ではないかとの提案がありました(宇根崎氏)。 * (提案)まず事業者の自主的取組として「SGキャップ」(不適合事象や気づきの是正)を実施し、効果測定後に法制度化する段階的アプローチが考えられる(宇根崎氏)。 * これに対し、日本原燃、東京電力、JAEAから、既に3S連携や不適合管理の一環として、保障措置(SG)に関する事項も「キャップ活動」や是正処置、アセスメントに含め、自主的に取り組んでいる実態が報告されました(中村氏、鶴田氏、丸山氏)。

論点2:不拡散カルチャーの醸成 * JAEAでの「核不拡散カルチャー」醸成の取組(保障措置強化月間)が紹介されました(堀雅氏)。 * 日本原燃(社長方針、e-learning)、東京電力(トップメッセージ、事例展開)、JAEA(全社e-learning、事例ロールプレイング)からも、類似のカルチャー醸成活動を行っている旨、報告がありました。 * 安全保障の専門家からは、「不拡散はNPT上の義務であり、事業者がこれを障害物と捉えるメンタリティを変えるのがカルチャー醸成の核心。これは当たり前のこととして取り組むべき」との厳しい指摘がありました。日本がこれを軽視すれば、国際情勢(イラン、北朝鮮)悪化の中でIAEAの査察エフォートが日本に集中し、SLA下でも査察は減らないと警告されました(秋山氏)。 * 一方で、濃縮・再処理事業者はカルチャーを理解しやすいが、軽水炉加工(間接利用物質)の民間事業者は「経済性」が優先されがちである実態も指摘されました(堀圭氏)。

論点3:事業者の経済性と責務 * 軽水炉加工事業者は純粋な民間事業であり、経済合理性を優先せざるを得ず、査察対応も操業を止めない時期(例:夏休み前)に設定している実態が報告されました(玉野氏)。 * 軽水炉事業者(関西電力)からも、経済性優先は事実だが、精神論(カルチャー)も重視しており、「保障措置が国際的信用を失い、サイクルが続かなくなる」との教育を実施していると報告されました(石田氏)。 * 軽水炉加工事業者から、査察対応(分析等)のスキルは専門性が高い一方、個人のキャリアアップに繋がりにくくジェネラルな仕事から外れがちなため、保障措置人材の社内的な待遇・位置づけが重要課題であるとの指摘がありました(玉野氏)。

論点4:国、事業者、IAEAのコミュニケーション * 「査察は密なコミュニケーションの場」と捉え、事業者は要求変更の理由を積極的に聞き(「反論」ではなく「コミュニケーション」)、規制側(国、IAEA)も事業者と対話すべきとの意見がありました(宇根崎氏)。 * JSGO(国)は、IAEAと事業者の間のコミュニケーションを円滑化する「モデレーター」役を積極的に担い、規制要求を明確化することで、Win-Winな関係を構築すべきとの提案がありました(宇根崎氏)。