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第76回技術情報検討会(令和7年11月27日)

出典 : https://youtube.com/live/Rgy-0qZKOZw?si=prtY7ezbZBCY37Tz

この会合は、第76回技術情報検討会の議事録作成と情報整理の支援として、安全研究・学術的な最新知見、国内外の事故・トラブル情報、および福島第一原子力発電所事故の調査分析に関する議論の要点を整理したものです。

会議内容の概要

  • 南海トラフ長期評価改定:地震の長期評価について、隆起量データの不確実性やベイズ統計手法の導入、滑り量異常BPTモデル(SSDBPTモデル) の採用などの技術的な見直しが行われたことが報告されました。
  • 長期評価の規制上の扱い:改定された長期評価は、基準地震動・基準津波の評価に用いる決定論的手法には影響を与えないため、規制ガイドの改定は不要と判断されました。
  • 電動弁駆動部の不良知見:実機材料を用いた安全研究から、重大事故(SA: Severe Accident) 模擬環境下で、設計外のアクリルパネル取り付けが原因となり電動弁駆動部(MOV) の動作不良(水没による通電不良)が発生する可能性が示唆されました。
  • 事業者への対応確認:規制庁は、電動弁の知見などについて、事業者が自らのこととして現場のメンテナンスや設備管理にどう活かしているかを継続的に監視・確認していく方針を示しました。
  • 福島第一事故分析の継続:事故の調査・分析では、水素爆発に関する検証が進められており、規制活動のヒントを得るため、今後は高圧注入系などに着目して知見の確認を進めていく方針が示されました。

議題1-1:南海トラフの地震活動の長期評価 (第二版一部改訂)について

技術的な議論の内容

  • 改定の背景と概要:令和7年9月26日に地震調査研究推進本部から公表された長期評価の改定は、超巨大地震を評価対象外としていた課題や、地震時の隆起量データの不確実性が指摘されたことを受けたものです。
  • 隆起量データの見直し:地震時の隆起量データについて、根拠となった測量記録の解釈の不確実さを考慮し、隆起量を確率分布で表現する見直しが行われました。
  • 地震発生確率モデルの見直し
    • 従来のBPTモデル(ブラウニアン・パッシング・タイム・モデル)に加え、時間予測モデルとBPTモデルを融合した滑り量異常BPTモデル(SSDBPTモデル) が採用されました。
    • SSDBPTモデルは、隆起量とひずみ蓄積速度の逆数を用いて、地震の規模と発生間隔の関係性を計算に取り込む拡張モデルです。
  • 計算手法の導入:パラメータの推定と不確実性の定量的な評価のため、ベイズ統計手法が採用されました。これにより、発生確率そのものの確率分布(ばらつき)を示すことが可能となりました。
  • 規制上の判断:長期評価の30年以内の発生確率の評価ランク(3ランク)は変わっていません。規制庁は、基準地震動および基準津波の評価は特定の算出手法に限定されない決定論的手法に基づいているため、今回の知見による審査ガイドの改定は不要と判断しました。
  • 山岡委員のコメント:今回の改定は、時間予測モデルにBPTモデルによるばらつきを導入した点、歴史記録の検討に不確実性を入れた点、ベイズの考え方を導入した点で、技術的に新しい進展であると評価されました。

規制庁からの宿題事項(コメント・指示)

  • なし。(浜岡原子力発電所、日方発電所など関係部門への情報共有は実施されました。)

議題1-2:実機材料を用いた安全研究から得られた電動弁駆動部の事故時環境下における動作不良の可能性に関する知見

技術的な議論の内容

  • 研究概要:原子力規制庁の委託研究により、沸騰水型原子炉(BWR) で使用されていた電動弁駆動部(MOV) のケーブルコネクタについて、重大事故(SA: Severe Accident) を模擬した環境下での性能評価が実施されました。
  • 故障モードの知見:ケーブルコネクタに本来の仕様外であるアクリルパネルを後から追加で取り付けたことが、SA模擬環境下で水没した際の通電不良につながる可能性が示唆されました。これは、アクリルパネルの存在によって水滴が留まりやすくなったことが原因と理解されました。
  • 環境条件:SA模擬環境下での放射線積算線量は、重大事故発生後1週間で500キログレイ(kGy) 程度が設定されています。
  • 適用範囲:この故障モードの発生や影響は、電動弁の用途、設置環境、および製造時期によって異なる可能性があると認識されました。
  • 規制上の重要性:この種の知見は、重大事故等対処設備(SA機器) を含めたLCO(運転上の制限) およびAOT(許容停止時間) の設定議論において重要な情報であると認識されています。

規制庁からの宿題事項(コメント・指示)

  • 事業者への対応確認:規制側は、この知見を踏まえ、事業者が自らの設備・環境における課題として認識し、現場のメンテナンスや設備管理にどう反映させているのかを、様々な観点から監視し確認していく必要があります。

議題2:国内外の原子力施設の事故・トラブル情報

技術的な議論の内容

  • 米国NRCの事象
    • 米国での事象について、関係者が運転手順を意図的に遵守しなかった、または虚偽の情報を提供していたという違反に基づき、米国原子力規制委員会(NRC) が確認命令を発行しました。
    • NRCは、実際の安全上の重要度は、水の漏洩量が少なく燃料露出もないことから「極めて低い」と判断しています。
  • フランスEDFの事象
    • フランスの加圧水型原子炉(PWR) で、MOX燃料を装荷しているプラントにおいて、2つの異常事象が重なることで安全上の懸念があるという報告がありました。
  • MOX燃料製造の品質問題
    • MOX燃料の製造プロセスにおいて、劣化ウラン粉末の混ぜ合わせの均質性が不十分であった事例が報告されました。
    • これは、製造工場の変更に伴い、製造方法が湿式から乾式に変わったことが原因とみられています。

規制庁からの宿題事項(コメント・指示)

  • LCO/AOT設定の情報収集:日本国内でもSA機器LCO(運転上の制限)/AOT(許容停止時間) 設定に関する議論が活発であり、リスクの考え方をどう評価に取り入れるかが課題となっています。海外での類似事例があるならば、その情報を積極的に収集することが望ましい。

議題3:東京電力福島第一原子力発電所事故の調査・分析に係る中間取りまとめ (2025年版) 等の報告

技術的な議論の内容

  • 水素爆発の検証:事故時に4号機で起きた水素爆発について、規制側が提唱する多段階爆発の可能性に関する検証が進められており、5階の方が比較的長い時間爆発状況が継続することなどが確認されました。
  • 炉内状況調査:3Dレーザースキャナーによる測定が継続されており、将来的にはVR(バーチャルリアリティ) などの技術を活用し、建屋内部の詳細な観察を可能にすることを目指しています。
  • 分析活動の重要性:事故分析活動は、新たな疑問が次々と出てくる困難な活動ですが、各種規制活動のヒントを得る上で極めて重要であると認識されています。
  • 外部連携:大学関係者など外部の専門家も参加する「ラウンドテーブル」を通じて、知見の共有と議論を促進しています。

規制庁からの宿題事項(コメント・指示)

  • 広報・情報発信の推進:大学関係者が多く参加している状況を踏まえ、論文発表などの機会を積極的に活用し、分析活動で得られた知見をより広く共有・発信していくことを推奨します。
  • 追加検討事項の設定:電動弁の知見(議題1-2)との関連も考慮し、今後の具体的な規制活動へ結びつけるため、まずは高圧注入系に着目して、事故に関する知見の確認を進めていく方針が示されました。具体的な確認内容は、報告書や現場の状況を確認しながら決めていく予定です。