第49回原子力規制委員会(令和7年12月24日)
出典 : https://youtube.com/live/5OShmMkJg2I?si=rjEvrjVb3aAP3VR4
会議概要
- 安全研究の戦略的承認:令和8年度開始のデジタル計装制御(I&C)および再処理施設のリスク評価に関する研究プロジェクトが承認されました。アナログ設備の枯渇対応や化学プラント特有のリスク評価手法の確立が急務となっています。
- リスク情報活用(RIDM)の基盤構築:事業者との意見交換を通じ、確率論的安全評価(PRA)の不確かさを「重要な判断情報」として共有。特に地震・津波PRAの国内標準化と実用化に向けた課題が整理されました。
- 国際的知見と最新技術の反映:ALPS処理水放出に関するIAEAレビュー結果や、能登半島地震等の最新知見を規制プロセスへ迅速に反映させる方針が確認されました。
- 規制の実効性と透明性の確保:特定重大事故等対処施設(特重施設)の設置状況に関する厳格な監視と、科学的根拠に基づく判断を継続する姿勢が強調されました。
議題1:安全研究に係る事前評価(令和8年度開始プロジェクト)
■ 議論の流れと論点: アナログ設備の入手が困難となる中で、デジタル技術への移行を安全に進めるための「デジタル計装制御の信頼性評価」と、複雑なプロセスを持つ「再処理施設等のリスク評価」の2プロジェクトが審議されました。 デジタル技術に関しては、最新デバイスの電磁波耐性(EMC)やソフトウェアの共通要因故障対策が技術的焦点となりました。 再処理施設に関しては、軽水炉とは異なる事象進展(蒸発乾固等)に対し、化学プラントで用いられるリスク評価手法をいかに適用するかが争点となりました。
■ 技術的な評価と結論(着地点): 2件の研究プロジェクトは、規制上の必要性が高く、計画も妥当であるとして了承されました。
- デジタル計装制御:国内外の最新動向を反映しており、民間規格への反映や検査での活用が期待できると評価されました。
- 再処理施設リスク評価:構造重要度評価(SID)等の簡易手法を組み合わせることで、規制検査や安全性向上評価の妥当性確認に活用できると判断されました。
■ 規制庁からの宿題事項(コメント・指示):
- デジタル機器の研究において、対象範囲や試験の具体的根拠を明確化すること。
- 再処理施設の評価では、化学プラントをベースとした既存のリスク評価手法も参考にし、従来の軽水炉とは異なる側面を考慮したモデル構築を行うこと。
議題2:「リスク情報活用に関する事業者との実務レベルの技術的意見交換会」における議論の状況報告
■ 議論の流れと論点: リスク情報を規制判断に活用する「リスク情報活用(RIDM)」の推進状況が報告されました。 最大の論点は「PRA(確率論的安全評価)の不確かさ」の扱いです。不確かさを「活用を阻害するもの」と捉えず、点推定値と併せて参照すべき「重要なリスク情報」であるとの認識を事業者(ATENA等)と共有しました。また、地震・津波などの外部事象PRAを含めた「フルスコープPRA」の実用化に向けた技術的課題が議論の中心となりました。
■ 技術的な評価と結論(着地点): 内的事象レベル1 PRAは手法が成熟しており活用に支障はないと確認。外部事象については、不確かさを認識しつつも「安全性の優先順位付け」に活用を開始し、経験を積みながら課題を特定していく段階的アプローチが認められました。
■ 規制庁からの宿題事項(コメント・指示):
- 不確かさを考慮した意思決定の具体的なプロトコルを、ケーススタディとして整理し提示すること。
- 地震・津波PRAにおけるプラント側の損傷確率(フラジリティ)設定の妥当性を示す定量的根拠を整理すること。
議題3:第76回技術情報検討会の結果概要
■ 議論の流れと論点: 国内外の事故トラブル事例や最新知見を規制に反映させるための検討結果が報告されました。 特に、能登半島地震後の最新の地質学的知見や、海外のデジタル制御系の故障事例が現行の審査基準やガイドに与える影響が技術的に検討されました。
■ 技術的な評価と結論(着地点): 直ちに規制要求を変更する事象は見当たらないものの、公的機関から発表される最新知見を審査ガイドや解説へ迅速に反映させるプロセスを継続することが確認されました。
■ 規制庁からの宿題事項(コメント・指示):
- 抽出された技術情報について、規制実務(審査や検査)への具体的な反映ルートを明確に記録すること。
議題4:ALPS処理水の海洋放出に関するIAEAレビューミッションの概要
■ 議論の流れと論点: IAEA(国際原子力機関)によるALPS処理水放出に関する最新のレビュー結果が報告されました。 放出設備の健全性、放射線環境影響評価の妥当性、および監視(モニタリング)の透明性について、国際的な専門家がどのような技術的評価を下したかが議論となりました。規制庁側は、IAEAの指摘事項が国内の規制判断とどう整合しているかを確認しました。
■ 技術的な評価と結論(着地点): IAEAからは「国際的な安全標準に合致している」との継続的な評価が得られており、現在の規制監視体制が妥当であることが国際的にも確認されたと整理されました。
■ 規制庁からの宿題事項(コメント・指示):
- IAEAのレビューで示された技術的な助言や推奨事項について、今後の監視活動や定期的な安全評価にどのように組み込むかを整理すること。
議題5:特定重大事故等対処施設設置の経過措置に係る追加報告
■ 議論の流れと論点: テロ攻撃等に対処するための「特定重大事故等対処施設(特重施設)」の設置期限に関連する、事業者からの追加報告内容が審議されました。 工事の進捗遅延リスクや、経過措置期間内での安全確保策の有効性が論点となりました。特に、工期の遅延が不可抗力によるものか、あるいは工程管理上の課題かという「立証の論理」が厳しく問われました。
■ 技術的な評価と結論(着地点): 事業者の報告に基づき、現在の進捗状況と安全対策の継続性を確認しました。ただし、期限超過は認められないとの原則を維持し、進捗状況の厳格な監視を継続することが合意されました。
■ 規制庁からの宿題事項(コメント・指示):
- 残る工事のクリティカルパス(重要工程)を特定し、遅延が発生した場合の即時報告体制とバックアップ対策を具体的に提示させること。
報告事項:原子力施設等における至近のトピック(トラブル等の状況)
■ 議論の流れと論点: 事務局より、最近の原子力施設で発生したトラブル(弁の固着や計器の不備など)のスクリーニング結果が報告されました。 特に、安全上重要な系統で発生した軽微な不適合が、共通要因故障の予兆ではないか、あるいは保守管理の不備に起因するものではないかという点が議論されました。
■ 技術的な評価と結論(着地点): 個別のトラブルはいずれも安全機能に直接の影響を与えるものではないと評価されましたが、類似事例の発生を未然に防ぐため、規制検査(ROP)の中で事業者の再発防止策を重点的に確認する方針が示されました。
■ 規制庁からの宿題事項(コメント・指示): * トラブル事例の分析にあたり、設計上の問題か、経年劣化か、人的ミスかをより明確に区分し、横断的な傾向分析を行うこと。