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第4回フュージョン装置の開発を進める事業者等との意見交換会合(令和7年12月25日)

出典 : https://youtube.com/live/1-DLnhmBKh8?si=v6y3A-lLHNXYnQK5

会議概要

本会合は、民間事業者によるフュージョン(核融合)装置の開発が加速する中、規制側(原子力規制庁)と事業者側が早期から安全確保の考え方を共有し、予見性の高い規制枠組みを検討することを目的としています。

  • 民間主導の多様な方式への対応: ヘリカル方式、レーザー方式、FRC(磁場反転配位)ミラーハイブリッド方式など、既存のトカマク型とは異なる技術体系における安全特性が議論されました。
  • 固有のハザードと安全対策: 液体金属(リチウム、鉛、スズ)の化学的リスクや、レーザー光の直接的な危険性、先進燃料(D-He3等)による放射化低減の可能性など、方式特有の課題が提示されました。
  • 規制庁の関心事: 異常事象の定義、崩壊熱除去の信頼性、トリチウム閉じ込めバウンタリーの妥当性、および深層防護の考え方が各方式でどのように適用されるかが焦点となりました。

議題1:事業者において開発中のフュージョン装置の安全確保の基本方針等について(事業者別詳細)

1. 株式会社Helical Fusion(ヘリカル方式:Helix HARUKA/KANATA)

  • 議論の流れと論点:
  • 本質的安定性: ヘリカル方式はプラズマ電流を必要としないため、トカマク型で懸念される「ディスラプション(プラズマ消滅に伴う電磁力衝撃)」が物理的に発生しない点を安全性の核として主張。
  • 高圧源の排除: ブランケット(熱を取り出す壁)に液体金属(スズ・リチウム等)を用いることで、水冷系のような高圧・高エネルギー状態を排除し、真空容器が過圧破損するリスクを構造的に低減する論理を提示。

  • 技術的な評価と結論(着地点):

  • 評価: 規制庁側は「ディスラプションがない」という物理的特性が深層防護の観点から有利に働く可能性を認めた。一方、液体金属がコンクリートと接触した際の化学反応や、スズによる構造材の腐食に対する工学的対策の妥当性が今後の焦点となった。
  • 結論: 固有の安定性は認めつつも、液体金属という「新たなハザード」に対する防護策(ドレンタンクへの緊急排出等)が、従来の安全設備と同等の信頼性を持つかを確認していくことで一致。

  • 規制庁からの宿題事項:

  • 液体スズ・リチウム漏洩時の影響評価(火災・腐食)および、漏洩検知・回収システムの具体的な構成図の提示。
  • 超伝導コイルのクエンチ(超伝導状態の喪失)が真空容器や安全機能に与える影響の解析。

2. 株式会社EX-Fusion(レーザー方式:実証炉構想)

  • 議論の流れと論点:
  • 反応の即時停止性: 核融合反応の維持にレーザー照射が不可欠なため、電源喪失時や異常検知時にレーザーを遮断すれば「即時に反応が停止する」という物理的特性を強調。
  • 液体壁による防護: 高速で流れる液体金属の滝(液体壁)で中性子を遮蔽し、初障壁(第一壁)の損傷を抑える設計思想を説明。

  • 技術的な評価と結論(着地点):

  • 評価: 「レーザー停止=反応停止」という論理は、反応制御の観点で非常に高い安全性を有すると評価された。一方で、レーザー光そのものが遮蔽を貫通して外部に漏洩するリスクや、ターゲット(燃料)供給系の故障シナリオの網羅性が課題とされた。
  • 結論: 液体壁による放射化低減効果は認めるものの、流体としての挙動が不安定になった際の除熱性能の担保について、さらなる立証が必要との着地点となった。

  • 規制庁からの宿題事項:

  • レーザー入射窓が破損した場合のトリチウム閉じ込め境界の維持方法の提示。
  • 燃料ターゲットの連続投入プロセスにおける異常事象(投入ミスや蓄積)の抽出。

3. LINEAイノベーション株式会社(FRCミラーハイブリッド方式:先進燃料)

  • 議論の流れと論点:
  • クリーンな核融合(先進燃料): D-He3(重水素・ヘリウム3)燃料を用いることで、中性子の発生を従来のD-T反応の数パーセント以下に抑え、材料の放射化やトリチウムの大量保持を回避する「低ハザード化」を提案。
  • 物理的防護の簡素化: 放射能インベントリが極めて小さいため、大規模な遮蔽や多重の閉じ込め系を簡素化できる可能性を主張。

  • 技術的な評価と結論(着地点):

  • 評価: 放射化やトリチウム保持量の低減は、公衆へのリスクを根本的に下げるアプローチとして高く評価された。しかし、D-D反応等により発生する「ゼロではない中性子」と、それによる長寿命核種の生成に対する評価の厳密さが求められた。
  • 結論: 先進燃料によるメリットを認めつつも、規制上は「放射性物質が存在する以上、その量に応じた防護が必要」という原則を確認。燃料調達(He3)の不確実性が安全設計に与える影響も注視されることとなった。

  • 規制庁からの宿題事項:

  • D-He3反応時に発生する副次的な中性子束の定量的評価と、それに基づく遮蔽設計の妥当性。
  • 燃料サイクルにおけるトリチウムの発生・回収フローの明確化。

4. 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)(ITERサイズ原型炉)

  • 議論の流れと論点:
  • トカマク型の集大成: ITER(国際熱核融合実験炉)の知見に基づき、大規模なトリチウムインベントリ(kgオーダー)を前提とした、多重閉じ込めと深層防護の徹底を説明。
  • 安全確保の成立性: 崩壊熱除去、真空容器の圧力逃がし、トリチウム除去設備など、従来の核分裂炉に近い「工学的安全施設」による立証を提示。

  • 技術的な評価と結論(着地点):

  • 評価: 最もデータが蓄積されている方式として、安全設計の具体性は高いと評価。ただし、崩壊熱除去が「受動的」に行えるか、あるいは電源を要する「能動的」なシステムに依存するかで、要求される信頼性が変わる点が議論となった。
  • 結論: 膨大な放射性物質を扱うため、民間事業者の小型炉とは異なる、より厳格な「工学的安全基準」の適用が不可欠であるとの認識で一致。

  • 規制庁からの宿題事項:

  • (前回の宿題の更新)トリチウムプラント建屋の閉じ込め境界の名称統一や、ガスパフ・ペレット入射系の三重閉じ込め構造の図面修正。
  • 真空容器の過圧保護系(VVPSS)の作動信頼性に関する具体的データの提示。

議題2:その他

議論の流れと論点

今後のスケジュールや、情報の透明性確保について確認が行われました。

技術的な評価と結論(着地点)

  • 継続的な対話の維持: 民間事業者の開発スピードに合わせ、適宜、技術基準の考え方をアップデートしていく方針が確認されました。
  • プロトタイプ装置の規制適用: 開発段階の装置(ハルカ等)において、トリチウムを使用しない段階での規制上の扱いについても整理していくことで一致しました。

規制庁からの宿題事項(コメント・指示)

  • 技術基準案へのフィードバック: 事業者は、規制庁が検討中の「安全確保の基本的考え方」に対し、自社の技術方式が適用可能か、あるいは特有の考慮が必要な箇所があるかを整理し、次回事例等で回答すること。